indigozineの流入経路として多いのがリファラーといって、どこかのHPやSNSのリンクから遷移し当サイトへ訪れるという方々です。もっと細かく申し上げますと、BIG JOHNのHPからの経路が多く、次いでSNSからの流入です。ここで肝心なのが最も多い流入経路ではないという点です。では最も多く訪れる方の経路となっているものは何か??
1年半前に書いたこのコラム。SHEINとは何者だという解説記事ですが、現在こちらからの流入が最も多いのです。Google上で表示される数は毎日2,3000に及びます。実際にどれだけ訪れたかは内緒です。。。個人的にはプチバズりだと思うのですが、未だに各メディアからSHEINについての解説の依頼が来ていませんので、追記事としてあれから一年半経ち今どんな状況か。もっと深掘ってみた考察をお話できればと思っております。
さて今更、前回のコラム、podcastでも散々「SHEINはSPAブランドでーーー、」という点から話が始まりますが、改めて説明しますと、SPAという言葉を作ったのはあのGAPです。SPAは略語で、正式名称は「specialty store retailer of private label apparel」となります。創業者のドナルド・フィッシャーさんが1987年に株主総会で使った言葉から始まりました。消費者からすればSPAだろうがOEMだろうがDirect Farmだろうが服は服な訳です。そんなのは関係ねぇとおっしゃられますが、アパレル産業の歴史の中でSPAブランドの登場ははとても革新的な事です。それは安いから。今から30年前のアパレル市場を全くわかりませんが、とてもゲームチェンジャーな業態だったでしょう。これ以降一気にアパレル産業の市場競争は厳しくなります。(厳しいというのは少々ポジショントークですね)
この図のように、消費者の元に洋服が届くまで複数社を介入しているのが一般的なアパレルメーカーとなります。一方SPA方式のメーカーはほぼ全ての工程を自社で行う事が出来るのが特徴です。これにより実現されたのが、トレンドを抑えた低価格で均一な品質の商品を届ける事になります。価格が安いことが大前提として大切ですが、おしゃれでトレンディでなければなりません。今欲しいものが安い。今の私たちでは当たり前な感覚ですが、相反する要素の2点となる為、非常に難しいポイントです。「価格」「トレンド」という要素と価格は近そうに見えて遠い存在になります。
例を挙げると「ダウンジャケットが今年は流行しそうだ」とすると、ダウンジャケット関連の素材の価格が需要過多になり高くなります。高くなった上に専門の加工業者さんは忙しくなります。合繊を縫い上げる縫製メーカーはオーダー過多で納期が遅くなります。最終的に価格転化されますので、本来5,000円が相場でしたが、10,000円で販売しなければ利益が上がらなくなってしまいます。そして10月に店頭に並べたかった物が12月になり、旬を逃してしまいます。また他のメーカーも流行の物は売れ筋として必ず作りたいでしょうから、思っていたほどの個数を作れない可能性があります。一方でSPAは素材の仕入れこそ苦労はあるかもしれませんが、ダウンのように過去に流行をした商品群であれば代替素材含め、スピーディーに大量の仕入れが出来、既にノウハウのある縫製ラインで仕上げられますので、流行しているからといって一般的なメーカーのように大苦戦をして生産するまでは至らないでしょう。この例であげたようにトレンドと価格というのは現在でこそ身近な要素であるかのように考えられますが、一般的のメーカーに属する私の立場からすると、多くの企業努力がないと「トレンド」×「低価格」は容易に両輪しうる物ではない事が想像して頂けると思います。であるが故に定番商品でビジネスを展開する事が長く続くメーカーの必要条件として挙げられるのかも知れません。
SPAが優れたビジネスモデルであるかと説いてきましたが、必ずしも栄華がずっと続くわけではありません。問題となる点はいくつもありますが、代表的なオポチュニティとして語られるのが余剰在庫です。大量生産向きであるが故に大量に作り過ぎてしまう。セールをして販売を続けて、デフレスパイラルに陥ってしまいます。本来企業は1円でも高く売る努力をするのが理想なのではないでしょうか?アパレルメーカーにおける「麻薬」セールの使い方はとても難しい物です。売上は瞬間風速では還ってきますが、粗利は低くなり、スパイラルに陥るといつの間にかセールでしか売れないブランドになってしまいかねません。かつて栄華を誇ったGAPも売上額、店舗数共に減少をしていますが、これの一因となったものの一つに、常時セール価格での販売があったのかと思います。また強大なサプライチェーンを自社で持っている訳ですから、一つの機能不全が大きなダメージを与えてしまいます。これは内的なリスクよりも外的な要因に弱いのが特徴です。昨今ですと流行病による突然の工場の閉鎖、戦争・紛争によるロジスティクの非効率化、不安定な為替相場による価格転化リスク。などなど巨大な規模であるが故にマクロ環境下において、一般的なメーカーよりも小回りが効きづらく、受ける利益も大きければ、相応にして大きなリスクがあると言えます。
SPAモデルにおけるメリット・デメリットを解説しましたが、SHEINは従来のSPAブランドより、ハイブリットなSPAブランドと印象を持っております。podcastで解説をしましたが、ZARA、Bershkaを手掛ける世界最大のアパレル企業「インディテックス」こちらも業態はSPAとなります////////Part2をご覧下さい。