SHEINの快進撃が止まらない!? Part.2

現在売上額ベースで世界最大のアパレル企業はZARA、Bershkaを手掛ける「inditex/インディテックス」2022年度売上高約4兆5466億円となっておりますが、2023年度ではSHEINの売上高は約4兆8000億~5兆円に達する見込みであり、2023年の終わりの数字は肉薄あるいは世界一位の座はSHEINに移るのではないかと見られています。

単位億ドル/indigozine調べ

2008年創設でまだ15年とたっていないにも関わらず、いかにしてこのような巨大な企業に膨れ上がったのか。そこには大きく分けて2つの要因があるのではないかと考えます。


トレンドを出来るだけ安く

アパレルにおける消費者心理として、最も強く作用する消費者心理は何だと考えるとトレンドを出来るだけ安くが最も一般的なマス思考ではないでしょうか。出来るだけ安く今時なものを買いたいのは世界中どの若者も思っている事です。SHEINの最大の強みはトレンドを出来るだけ安くという消費者の2つの思考性を満たすバリューがある企業であるからです。SPAの誕生によりアパレル産業のサプライチェーンは大きく変わりました。GAPのジーンズ、パーカー。ユニクロのフリース。SPAブランドによって生まれた大ヒットファッションアイテムはこれまで無数に誕生してきました。私たちはより安く至る所で服を手に入れられるようになりました。Inditexはそこにトレンディというバリューを持たせGAPを引きずり下ろし世界一の地位を築きました。SHEINのバックボーンには興味深いものがあります。SHEINは2008年クリス・シュー氏が南京希音電子商務としてウェデイングドレスを製造販売する会社からスタートしています。シュー氏はアパレル企業で経験を積んできた人物ではなくweb seoのエンジニアとしてキャリアをスタートさせた方です。SHEINはトレンドを言語化する事によってトレンドを出来るだけ安くを実現しているのです。

一般的なアパレルメーカーにはデザインを司る部門がありトレンドやコンセプトなどを鑑み今シーズンはこういう服を作るぞ!という取り決めをした後、サンプルを幾度となく作り製品化にこぎつけます。そこにプロモーションや小売店への営業が紐づいて来るので、デザインの部門はアパレル企業の根幹の機能と言っても差し支えないでしょう。このデザインこそがデザイナーの手腕が試される部分です。売上はもちろん重要なKPIですが、ブランドのコンセプトを外していないか?消費者のイメージを崩していないか?などなど数字では評価できない部分が多分にあるのが醍醐味でありますし、アパレル企業内では特殊な職域と感じる部分であるかもしれません。

SPAといえどデザインはアパレル企業であれば当然重きを置いています。近年話題になったのはエルメスで活躍したクリストフ・ルメールがUNIQLO Uを監修させUNIQLOに更なるブランドバリューが生まれました。またBUSINESS INSIDERの記事によると、ZARA本社では300人にも及ぶデザイナーが働き、自己研鑽を重ねて良質なアウトプットに結びつけているとあります。ですから今日の私たちはSPAの服であっても魅力的で良い買い物と思えるショッピング体験となるのです。

しかしSHEINはこのデザイナーの仕事を言語化、数字に置き換えてサプライチェーンに組み込んだことによって、圧倒的な速度での新商品の展開ができるようになりました。AIによって今のトレンドだけでなく、有名ブランドによるコレクションの展開、これから流行るものまで全て生成できるようになりました。

それにより毎日3000〜10000の品番を作り出すことが可能となりました。また企画から販売までのリードタイムはわずか3日となっており、inditexの2週間という数字から見ても圧倒的な速度でアイテムの展開が行われているのです。膨大な品番数ですがこれらは基本小ロッドでの生産が特徴です。これだけの売上規模にも関わらずミニマムのロットは100〜ととても少ないロットでの生産が行われています。Part1でも書きましたが、SPA企業のウィークポイントとして一品番の大量生産による余剰在庫という点が挙げられます。SPAに関わらず特にシーズン物(トレンド物)の余剰在庫は過剰なマークダウン商法に走ってしまいがちで、ゆくゆくは企業経営を悪くする悪手として多くのアパレル企業を悩ませてきました。

SHEINのサプライチェーン
従来のSPAブランドのサプライチェーン

簡単ではありますがこれまでのSPAとSHEINのサプライチェーンの特徴的な違いを表してみました。図からも分かる通りSHEINとはこれまでのSPAでウィークポイントとなりうる点をAIの技術や店舗を持たない事によって解消してきた、ハイブリットSPAと言えるでしょう。